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指宿_神話紙芝居_猿のはじまり

更新日 2016年02月20日

猿のはじまり

老齢ナお爺さんとお婆さんがおって。昼、乞食が来てナ。モんお婆さんが、あイ限ィ〔の〕米をバ、 〔世間〕イッペ、ちょっ(さかずき)ひとっずっでん呉れっナ。

もう、何じやい無かごっなって。ほして、こんだ、(隣の)染物屋セェ行たっ、「泊まらせんか?」チ、もれにんが言たや、「今夜、年ィの晩には泊まらせはならん。今夜ん年ィの晩に泊まらすっ家や、そこん上ん婆と爺さんがおっとこいしか、泊まらすっとこや無か」ちゅっせえナ。〔それで〕そけ(婆さんと爺さんのいる家へ)行たっ、「泊まらせ」ちゅたや、「そんなら泊まいやい」チ。「じやっどん、食う物ナ無か」 チ。米がちょっ(杯)ひとっばっかいあってナ、そん、ちょっひとっばっかいの米をバ、「あたいダ(われわれは)上澄っばっかいで良デ、 お前ゃこしこ(これだけ)で足らせがなれや、泊まって良か」チ言あったチ。こんだ、「そいで良か」ちゆっせえナ、 「明日も食わんナならんで、こんだ、大か羽釜〔に〕しこえ」ちゅっせえナ、大か羽釜〔に〕水〔を〕がんぶい入れっナ。 そして、そん人(乞食)がお経をあげっせぇ、三粒、たった(の)三粒入れたやナ、羽釜からこぼるっごっ、飯が、いみってナ。ほして、もう、「こういう良かこちや無かった。もうおてつき(腹一ぱい)食てん、食とらん」チ、言っせえナ。

---正月の、元朝の日は飯や炊かんとこいごあんサ、 こっちは。前ん晩の飯が残っておってナ。

---ほして、「こういう良かこちや無かった」ちゅっせえ。そして、もう、こんだ、「帰っ」チ。 帰りにゃ、「何か、欲し〔い〕品がありゃせんか?欲し品があれば、何でん、しっくるっ」チ、ゆたや、「ま、欲しい品は、こうしてごはんヌ、やいや、ごはんヌ、ごんと食がなれや、そいで良か」チ、ゆたや、「まだ、そいから上があっどが! 何か欲し品があやせんか?」ちゅたや、そん人が、「ま、出来れば、元ん一ハ〔歳の若さ〕バ、願ゴ」チ、言たや、「じやっどが!」ちゅっせえ。こんだ、そん人ん(乞食が)衣ん袖を持って、面を、こうして拭っくれたやナ、〔爺さんと婆さんが〕 一八チ、なったちナ。そして、〔二人に〕 「どっか、正月礼イ、行っとこいがありゃせんか? 行っとこいがあれバ、行け。」ちゅたや、

---そん、染物屋は従兄弟じゅたちナ。

---で、染物屋ェ行たっ、〔座敷に〕上がって座っじょったや、「どこん人か来て、座って、・・・・・・。立派な人が来て座っちょいが、 あャ(あれは)どこん衆じゃろかい?」チ、言もしたチ。そん、染物屋ん衆が。「お前たちゃ、どこか?」ちゅたや、「上ん婆と爺さん じゃ」ちゅたやナ、「こヤ、若なったもんじゃ」ちゅっせェ。

---そいで、ソラ、元朝の日に挨拶すっとか「ワコナイヤシツロ」チ、こっちの衆は言うト。

---そして、こんだ、また、「若年(小正月)ちゅうとを取らんないかん。」ちゅっせえナ、そん、染物屋ん衆が。

---そして、「早ョ、乞食をバ連れっ来ェ、〔連れに〕行たっ来ェ」チ〔ゆうて〕見てまわったや、〔乞食が〕おったちナ。そして、「どうか、今夜、若年ちゅを取っで、あたいゲェ(私の家へ)来てくいやい。」ちゅて、ワッゼーか(たいそうな) 御馳走をして......。ワッゼーか御馳走をしもしたちワ。そして、こんだ、若年ちゅを取って、もう、〔乞食が〕発って戻ろチすっ時、「あたいどんも、 若ならせっくいやい」ちゅたや、「若なろごっあいか?」ちゆっ、「竹ん笹とカタイの葉(椿の葉)をバ、チ切って来ェ」チ。〔そして〕シバ(葉つきの枝) を採って来させっ、そして、〔染物屋の夫婦の〕びんた(頭)から面をバ、そんシバで叩ったくったチ。〔そして〕「猿、もう、あっち行け」チ、 したやナ、猿になって、キー、キーちゆっ、カタイの木サエ、ケ上がったちゅでやナ。〔そして、一八歳に若がえった〕爺さんと婆さんに、 そん跡をくれっ〔乞食は発った〕。そして、猿は、よっごろ(欲張り)で、働らっもんじゃっで手はまっ黒〔く〕して、染めたない(身なり)で、 洗たいもせんもんじゃっでナ、まっ黒〔く〕なって、面と尻は、「猿、もう、あっち行け」チ叩かれっ、まっ赤しとっちゅわいナ。

〔話者 木之下 木之下金蔵(明治三十八年十月ハ日生)〕