祖父母が住んでいた指宿で、新たなチャレンジを
20代は福岡市内で仕事中心の生活を送っていましたが、都会での暮らしにも少し飽き、思い切って暮らす場所そのものを変えてみよう、と考えました。
とはいえ、移住して何をするのか、その先どう暮らしていくのかまで考えていたわけではありません。何か明確な目的があったというより、「30歳の節目だし、ちょっと違うことをしてみよう」くらいの気持ちでした。
祖父母が指宿に住んでいたため、以前から何度か訪れたことがありました。まったく知らない土地よりも少し馴染みのある場所だったことから、自然と指宿が候補になりました。
ただ、移住した頃には祖父母はすでに亡くなっており、指宿に知り合いがいたわけではありませんでした。
現在は、指宿駅前でリラクゼーションサロンを経営しています。
もともとリラクゼーションの仕事は続けたいと思っていましたが、独立するつもりはまったくありませんでした。指宿に来てみると、リラクゼーション店そのものが少なく、それなら自分でやってみようと開業したのが始まりです。起業への強い憧れがあったというより、「まあ、やってみるか」くらいのスタートでした。
ちょうどコロナ禍での開業だったこともあり、最初から順調だったわけではありません。試行錯誤しながら、少しずつお店を続けてきました。
そして開業から2年。ようやくこれから、という時期に子宮頸がんが見つかりました。手術と抗がん剤治療のためお店を休業せねばならず、自分が働けなければ、お店も止まってしまうという現実に直面しました。
この経験をきっかけに、自分一人が働くことで成り立つお店ではなく、自分が施術できないときにも続いていくお店にしたいと考えるようになりました。現在はスタッフと一緒に、長く続いていくお店づくりに取り組んでいます。
いざ移住を決めた直後は、よそ者として馴染めなかったらどうしよう、村八分のようになったらどうしよう、という不安がありました。
でも実際に暮らしてみると、お世辞抜きに温かい方が多いです。道端で知り合いに会えば、自然と立ち止まって近況を話すことも多く、日常の中で人とのつながりを感じる場面がたくさんあります。福岡にいた頃よりも、人との距離が近いように感じています。
地方で暮らす中で、「周りを頼らず自分だけで生きていくのか、それとも地域に馴染んで、人と関わりながら生きていくのか」ということは一度考えました。私は後者を選び、周りの方に助けてもらいながら暮らしています。
不便なことを挙げるなら、知り合いが増えすぎて、すっぴんで気軽に出歩けなくなったことでしょうか。少し歩けば誰かに会うので、福岡にいた頃のような匿名性はありません。でも、それも人との距離が近い指宿ならではだと思っています。
指宿温泉祭の花火募金活動に、参加しています。
私の場合は、たまたま飲み会の席で声をかけていただいたことがきっかけでした。そのときはあまり深く考えず、「やります!」と答えました。
移住した当初は知り合いが一人もいませんでしたが、仕事や日々の暮らしの中で知り合った方との縁から、少しずつ地域とのつながりが広がっていきました。
地域との関わり方は人それぞれだと思います。私の場合は、声をかけてもらったときに「とりあえず参加してみよう」と一歩乗ってみたことが、人とのつながりを広げるきっかけになりました。
自宅から歩いて5分ほどの海岸がお気に入りです。最近きれいに整備され、ライトアップもされているので、夜に一人でふらっと行って、波の音を聞きながらぼーっとする時間が好きです。お酒を片手に過ごすこともあります。
夜に女性一人で海を眺めていても、怖いと感じることがなく、静かに過ごせるところも気に入っています。
元々海好き、というほどではありませんでしたが、今では海が日常のすぐそばにあることは、指宿で暮らしていてよかったと思うことの一つになりました。
私は駅前に住んでいるため、JRやバスを利用でき、普段の生活では車がなくてもそれほど困っていません。ただし、これは住む地域によってかなり違うと思います。
大きな買い物など車が必要なときには、知り合いに車を出してもらうこともあります。私の場合は、公共交通機関や徒歩で生活できる環境に加えて、周りの方に助けてもらうことで車のない生活が成り立っています。
車を持たずに移住を考えている方は、駅やバス停だけでなく、スーパーや病院、職場などへの実際の生活動線を確認してから住む場所を選ぶことをおすすめします。
これまでは自分自身が働くことで成り立つお店でしたが、病気を経験したこともあり、自分一人に依存するのではなく、スタッフと一緒に長く続けていけるお店に育てていきたいと思っています。
そして今後は、指宿への移住を考えている方をスタッフとして迎えることもできたらと思っています。外から来た人の新しい感覚や経験も取り入れながら、指宿で暮らす方にも、旅行で訪れる方にも愛されるお店をつくっていきたいです。
あまり深く考えすぎなくてもいいと思います。
私自身、移住するときに仕事もその先の人生も、きちんと計画していたわけではありません。
実際に来てみてから仕事を作ったり、人と出会ったり、思いがけない出来事もたくさんありました。全部を一人で何とかしようとせず、周りの人に頼ったり、誘われたことにとりあえず参加してみたり。そうしているうちに、自分の居場所ができていったように思います。
最初から「ずっとここに住む」と決めなくても、合わなければそのときにまた考えればいい。まずはやってみる、くらいでもいいのではないでしょうか。